掛軸のまめ知識
1.掛ける
A.諸道具の活用
①矢筈(やはず)
床の間の天井のフックへ、軸の紐を掛けるのに便利です。これがあれば踏み台やイスはいりません。
②自在掛(じざいかけ)
高さを調整します。短い掛軸でも、ちょうど良い高さに下ろせます。掛軸の巻緒(紐)を結んで掛けるのは、危険が多いのでお止めください。
③風鎮
長期間つるすと掛軸に負担がかかりますので、適度に外しましょう。季節によって、洋服のように着替えを楽しんで下さい。
B.楽しむ期間
年中、いつ見ても同じ掛物があるというのは避けたいものです。例えば、3ヶ月に一度(季節の変わり目)、掛け替えをするのが理想でしょう。
2.しまう
A.巻き方
①まずゆるめに、絵の部分が隠れるくらいまで巻き上げます。
②その位置で、左右を調整しながらゆっくり締めていきます。
③真ん中を片手で持ち、もう片方の手で矢筈を持ちます。
④矢筈でひもを外し、まくりこむように掛軸を逆さまにします。
(この時、本紙が折れないようにご注意下さい)
⑤そのまま巻いていきます。
B.風帯のたたみ方
そのまま巻き込まず、必ず折りたたみます。左の帯は右へ、
右の帯は左へたたむように、おりぐせが付いています。
C.ひもの結び方
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左の図は、あくまでも一例です。 ・きつく結ばないように ・紐の一端を引くとすっとほどけるように |
3.桐箱について
A.桐箱の効果
湿気にも乾燥にも強いのが桐材の特徴です。大切な美術品を、気候の変化から守ってくれます。戦時中は、防空壕の中で水に浸かった美術品が、桐箱のおかげで中身は助かったという例もあります。
B.桐箱の品質
余った材料をボンドで貼り付けただけの安価な箱もありますので、作品を保管していくという点では大いに不安があります。上質の桐材を加工し、膠止めを施した上に木釘で諸方を補強した、伝統的な箱が良いでしょう。
4.防虫香について
最近では防虫効果の高い化学製品も増えてきましたが、紙や絹には強すぎるものもあります。またナフタリンなど、シミの原因となる場合があります。
やはり、古来親しまれてきた天然のお香が、強すぎず弱すぎず、美術品から虫を遠ざけるには最適であるようです。しかし現代では、なかなか香炉で香を炊くということも少なくなりました。当店では、このような掛軸保存の伝統を生かした専用の小さな袋に入った防虫香を使用しています。
5.保管
保管場所は、じめじめしたところ、あまりにも乾燥した場所は避け、できるだけ常温を保つことができる場所を、家の中で探しましょう。また、所蔵品は年に1~2回、春秋の晴れた日に虫干しをして頂くとベストです。掛軸をしまう時は、できるだけ乾燥した時を選んで下さい。雨の日などに片付けると、湿気を箱の中に呼び込んでしまいます。