猩々
しょうじょう
美術の世界の「猩々」は動物学上の猩々とは異なり、謡曲の猩々が登場することがほとんどです。
親孝行の高風が夢のお告げのままに市で酒を売ると、次第に富貴の身となります。この市が立つごとにやって来て何杯も酒を飲むが、一向に顔色の変わらない客があり、不思議に思って名を問うと、海中に棲む猩々だと答えました。
ある日揚子江のほとりに酒壷を置いて待っていると、やがて波間より猩々が現れ、杯を重ねて心地よく舞い出しました。そして高風の素直な心を褒めて、
これまでの酒の返礼にと酌めども尽きぬ酒壷を与えました。
とうとう酔い臥してしまうところで高風の夢は覚めますが、猩々の酒壷だけは手もとに残り、家も末永く栄える、というのがその内容です。